首都ダッカに住むスラム人口は、500万人以上と言われている。1つのスラムにはおおよそ200〜500人(男55%、女45%の割合)が住んでおり、その多くは地方から仕事を頼りに上京してきた人たちである。大概、彼らの教育水準は低く、男性はリキシャドライバーとして、女性はメイドとして働くことが多い。
そんな彼らの一家の稼ぎは1日平均で50〜150タカ(75〜225円)程度と言われており、そこから月に家賃1000〜1600タカを支払わなくてはならない。ゆえに、彼らの住居は非常に小さなもので、3畳程のトイレも風呂もない、寝るだけの部屋に家族や友人同士6〜7人で共同生活しなければならない。家賃が払えなくなった場合は、スラムを追い出されることとなり、結果的に路上生活者となってしまう。
政府が「存在」そのものをも認めていない人々がバングラデシュには存在する。彼らはバングラデシュで「ビハーリー(インドのビハール州を起源にする移民)」「マルワリ(掃除人として連行された移民)」「ノン・ベンガリ(非ベンガル人)」「ウルドゥー・スピーカー(パキスタンの公用語であるウルドゥー語を話す人)「マウラ」「難民」等の名前で呼ばれている。
彼らは政府に存在を認められていないがゆえ、市民権を持たず、パスポートも所持できないため、海外にも出ることができない。満足な教育が受けられず、まともな職も見つけられない。結婚も同じ立場同士のものがすることが多く、政府による問題解決自体が先延ばしにされているのが現状である。
・名前:ナズマーヤ(仮名)
・年齢:19歳、子供1人
・月給:約1500円(メイドとして職場2ヶ所をかけ持ち)
・夢 :子供に教育を受けさせること
ナズマーヤは、同じスラムに住んでいたリキシャドライバーの男と結婚し、出産。しかし、間もなく男は彼女を捨て、他の女性のところに行ってしまう。彼女はスラムで生まれ育ち、教育も受けていないので、メイドとして働く以外の選択肢はない。そんな彼女の夢は、子供に教育を受けさせることだという。
・名前:ハジナ(仮名)
・年齢:14歳、独身
・月給:約300円(職業はメイド)
・夢 :両親の助けとなる
ハジナの父はリキシャドライバーとして働いており、稼ぎは非常に少なく、1日の稼ぎは80タカ程度(約120円)程度。ハジナは家計を助けるために働き、学校へも行くことができない。それでも彼女は「両親の助けになりたい」と語った。